Swedish Design & Culture

スモーランドのガラス工芸

スモーランド地方のガラス工芸は、独創的なデザイン、芸術性、高品質が評価され、世界中から愛されています。また、王室の晩餐会に使われるものから、使いやすい日常用品まで、幅広い層からも支持されています。

透き通るようなクリスタルガラスの上品な輝き、色鮮やかな花器やボウルなど、さまざま。

シンプルながら、洗練された模様のグラス。散りばめられた色の結晶たち。
それらにはどんな物語が封じ込められているのでしょうか。

ガラスの産地であるスモーランド地方は、スウェーデン南東部に位置し、2つの大きな町ヴェクショー(Växjo)とカルマル(Kalmar)の間にあります。
広大な森と湖が広がる土地はコスタ(Kosta)やオレフォス(Orrefos)などのクリスタルガラス製品が有名で「ガラスの王国」とも呼ばれています。

「ガラスの王国」を紹介するうえで忘れてはならないのが、バルト海に面したカルマルという都市の存在です。

16世紀まで、カルマルはスウェーデンとデンマークとの国境に近かったため、両国の取り合いの戦火を浴びることが多かったそうです。そのため、戦略的な重要度が高く、海港•商業が発展していくなかで林業や鉄製品の産業も繁栄していきました。
またこの時期に、時の主導者であったグスタフ•ヴァーサ王が、スモーランド地方の産業の振興をはかるためにイタリア・ベネチアよりベネチアングラス職人を呼び寄せ、カルマル市近郊に住ませたことからスウェーデンガラスの歴史が始まったと伝えられています。
なぜガラス産業の場所としてカルマルを選んだのかというと、ガラス製造に必要な薪と清水は、スモーランド土地の豊かな森林と湖から供給できるため、品質の高いガラスを製造するのには最適だったからです。

その後は、デンマークとの国境が南下したことでカルマルの戦略的重要度が低くなり、18世紀には、かつては盛んだった林業や鉄製品の製造は衰退の一途をたどります。それにかわってガラス工業が注目され、ほとんどの鉄工場はガラス工房へと転身していきました。
ガラス工房では生活必需品以外にも、生活を彩るガラス工芸を手がけたり、時には芸術家とコラボレートすることでブランド価値を高めていきました。
こうして発展したスモーランド地方のガラス産業は1917年のノルウェーでの展示会で各国の注目を浴び、1925年の美術国際博覧会ではグランプリを受賞、さらにその注目度に拍車をかけました。
そして現在でもそのガラスの芸術性、品質の高さは、たくさんの人々を魅了し続けています。

ものづくりの背景には、必ずその土地の風土や歴史が深く関わっているものです。
スモーランド地方の「ガラス王国」は、スウェーデン南東部の豊かな森林と湖によって形成され、その歴史によって地場産業の衰退•繁栄を経てきたことがわかります。

シンプルながら、洗練された模様のグラスに美酒を。
物語に想いを馳せながら、今夜は一杯いかがでしょうか。

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